スポンサーリンク

54話 昨夜の続きのように――優しい手と、膝枕の朝

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!ティオ ルシフェリア 昨夜の続きのように――優しい手と、膝枕の朝 TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。


朝、隙間から差し込む光が眩しくて目を開く。
けれど、起きようとした瞬間、腰から下がまったく言うことを聞かない。


「……あ、立てない……」


頭ではわかっていたけど、体が現実を突きつけてくる。


(軽い思い付きで言ったことだったけど、ほんとに……こんな漫画みたいなことになるんだ……)


昨夜の光景が一瞬で蘇り、顔が熱くなる。


「ルシ?……動けない?大丈夫?」


涼しい顔で隣から声が降ってくる。


「……だ、大丈夫です……」


無理やり笑顔を作るも、ベッドから半歩も動けない。


「……ふふ、自業自得だね」


彼の小さな笑い声が、昨夜の続きのように耳に残った。
ベッドから動けない私の額に、そっとキスが落ちる。


「今日は家でできる作業するから、ここでゆっくりしよ」

「いや大丈夫です……私のことは気にせず、研究室行ってきてください」


ティオは私の髪を指先で梳きながら、クスッと笑う。


「まぁ、僕のせいでもあるからね」


その笑みが優しすぎて、しょんぼりと目を伏せる。


「……また私がわがまま言ったから、ごめんなさい」


すると、彼は少し照れたように、ぽつりと答えた。


「ううん。ルシが可愛いお願いしてくれたから……実は僕も昨日が来るの、心待ちにしてた」

「……っ」

「……今度は翌日何もない日にしないと、だね」


顔を見合わせて笑い合い、もう一度ぎゅっと抱き合う。
こうして翌日の朝も、甘い時間は続いていった。







動けない私の分まで身支度をしてくれると、私をソファまで抱き上げて運んでくれる。


「ほら、ここでゆっくりしてて」

「……はい」


二人でソファに腰掛けると、彼は優しく私の体を横にして、髪の毛を指でそっと梳く。
膝枕のまま、ティオはそのまま机に向かい、書き物を始めた。

ペンの走る音と、時折頭を撫でる大きな手の温もり。


(……本当に優しい……行動すべてが丁寧で思いやりがあって……)


仰向けで体を預けつつ、ふと横を見ればティオ様のお腹が目の前にある。
彼の香りが鼻をかすめ、意識がそちらに引っ張られる。
大人しくしていようと思うほど、どうしても気になってチラチラ見てしまう。


(……腹筋われてるけど、力入れてないときは柔らかいのかな。)


そんなことを考えながら、ごろりと体制を変え、お腹の方に体を向ける。
そしてそのまま、指先でちょんと触れてしまった。


「……ルシ」

「……はい?」

「そういうのは、元気になってからね」


苦笑しながらも、優しく私の額を指先でつつく。


「ほんと……油断するとすぐこれなんだから」


呆れたように笑いながらも、撫でる手は優しいままで。


「……ちぇ。大人しくしてます」


そう言って、膝の上でもう一度仰向けになると、帝国の法律の本をぱらぱらと読み進める。
膝のぬくもりを感じながら、ページをめくる手は自然と早くなっていく。







ティオは書き物が一区切りついて、ペンを置いた。
膝の上で本を読んでいるルシの顔に視線を落とす。


(……真剣な顔も可愛い。最近頑張ってるみたいだな)


頬をそっと撫でると、無意識なのか目を細めて、ふにゃりとした表情に変わる。
そしてまたすぐ本に視線を戻す姿が愛おしくて、思わず口元が緩む。


(邪魔したら悪いけど……気持ちよくて、つい触っちゃうな)


指先でルシの頬や髪をなぞり、その柔らかさを確かめる。
本のページをめくる音と、膝の上の重みが心地よくて──
この時間が終わらなければいい、とふと思った。

頬を撫でていると、ふっとルシが上を向いてくる。


「……ティオ様、見すぎです」

「あ……ごめん、邪魔するつもりじゃなかったんだけど」

「……そんなに私のこと好きなんですか?」


迷いもなく頷く。


「うん……大好き、ルシ」


そのまま唇を重ね、軽く音を立ててキスをする。
くすぐったそうにするルシの表情が、胸の奥をさらに温かくした。
次の瞬間思いもよらない言葉がルシの口から飛び出す──


「今、めちゃくちゃえっちな下着作ろうと思ってるところなんで、楽しみにしててくださいね」


にこにこ顔でそんなことを言うルシに、言葉が詰まる。


「……え……?」

「また足腰立たなくなっちゃうかもしれませんね」


悪戯っぽく笑うその顔に、思わず視線を逸らす。


「……ルシ」

「はい?」

「……ほんと、油断ならないな」


小さく息をついて、その頬をむにむにと軽く摘まむ。
ルシは僕を見上げて表情を緩めたまま、小さく問いかける。


「嫌ですか?」


僕がなんて返事するかなんてわかっているような顔で。


「……嫌なわけない。可愛すぎて困ってる」


そういうとルシフェリアは満足そうに笑って、また本に視線を戻した。
上下に移動するルシの瞳を見つめながら、ちょっとしたいたずら心が姿を現す。


「ルシってば、可愛い顔して”そういうことばかり”考えてるの?困ったな、僕は体がもたないかもしれないな」


平然とした顔で言い切った瞬間

──バサッ
彼女の手から本が滑り落ちた。


「なっ……な、なに言ってるんですか!……ティオ様のバカ!」


耳まで真っ赤に染めて顔を覆うルシ。
その様子を見て、ティオはくすっと笑い、頬を指でつついた。


「え? 本当のことでしょ?」

「~~っ、悔しい……っ! もうこうなったら……絶対えっちな下着用意して誘惑してやる!!」


勢いで口走ったその言葉に、自分でも真っ赤になって慌てふためくルシ。

そんな姿が愛しくてたまらなくて、ティオの口元はまた柔らかく緩んだ。


(……また今日も、ルシに振り回されるんだろうな)


また彼女のわがままを沢山聞いてあげようと思う、穏やかな昼下がりだった。



☜前の話へ   次の話へ☞