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40話 朝のいたずらと、やさしい二度寝

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい! ティオ ルシフェリア 朝のいたずらと、やさしい二度寝 TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。



ふわりと朝の光が差し込むなか、目を覚ましたルシフェリアは、ゆるく寝息を立てるティオの横顔を見つめて、そっと笑みを浮かべた。


(可愛い……)


起こさないように優しく頬を撫でながら、昨夜の甘い時間を思い出す。

(……疲れたな……というか昨日……良かったな……)

ひとりで思い出し笑いを浮かべながら、そっと隣に視線を戻す。

ティオの、柔らかく乱れた髪に指を滑らせるように前髪を分けると、整った眉とすっと通った鼻筋が露わになる。

「……綺麗な寝顔……顔が良すぎる」


長い睫毛が、影を落とす。
柔らかそうな唇。
顔立ちは中性的で、穏やかな表情で眠っている。

だけど、時折わずかに動く喉仏の小さな動きに、思わず喉を鳴らす。


(……あぁ、色気が……こんなに綺麗なのに、男の人なんだ)

思わず手が伸びる。
さらさらの髪を撫で、額に触れ、次に顎のラインへ。

(起こしたら悪いけど、もうちょっと触りたい……)

息を潜めて、そっと指を伸ばす。
光の下で、喉仏の線がゆっくりと浮かび上がっていた。
ルシフェリアは、ほんの出来心で――そのラインを指先でなぞった。

(……これはスケッチしないといけない……)

指の腹に伝わる、かすかな温もりと硬さ。
そのままの勢いで、ルシフェリアは指先でティオの唇をふにふにと押した。

「……ん……」

ティオの喉から微かな声が漏れた。


(あ、調子に乗り過ぎた。……怒られるっ)


瞼がぴくりと震え、次の瞬間――

「……おはよう、ルシ」

眠たげな声。
いつもの明るさとは違う、低く柔らかい響き。

それだけで胸が鳴った。

「ち、違うんです起こすつもりじゃなくて、あのっ……つい、指がっ……!!」


慌てて弁明するルシの頭に、ティオの手がぽんと置かれる。


「起こしてくれてありがとう。……朝から君の顔が見られて、幸せだよ」

「~~~~っっっ!!!」


枕に顔を埋めて、身悶えるルシフェリアの背に、ティオの低くてあたたかい笑い声が落ちていった。


「……もうちょっと時間あるし、まだ寝よ」


ティオがそっと手を伸ばし、ルシフェリアをふわりと抱き寄せる。


「え、でも……」

「……二度寝ってことで」


優しく囁く声に胸が高鳴る。
ぎゅっと抱き締められ、柔らかく温かい胸に包まれる。


「……おやすみ、ルシ」

「ん……」


寝かしつけるように、ティオの手がゆっくりとルシの髪を撫でる。
額からこめかみ、耳の後ろへ――繰り返される、やさしくて、穏やかで、心地よい手の動き。


(……幸せ……普通起こされたら嫌だよね……なのにこんなに甘い言葉掛けてくれて……)

ルシはその撫でられる感覚に身を預けて、うっとりと目を細める。
けれど、しばらくして。

撫でる手の動きがふっと止まり、ふいに聞こえた寝息。

(……寝た……!?)


そっと見上げると、ティオはそのままの姿勢で、気持ちよさそうに目を閉じていた。

(なにこれ……かわいすぎるんだけど……)

すぐそばにある、整った顔。
軽く触れたままの手のあたたかさ。
リラックスした寝息。

(私を寝かしつけてたのに、自分が寝ちゃってる……なにそれ……)

思わず胸元に顔を埋めて、足をばたつかせたくなる。

(あああ~~~っ、好き~~~~~!!!……今のうちにティオ様堪能しよっと)

そっと目を伏せると、胸元に鼻を寄せた。

(……いい匂い……落ち着く……)

香油の香りと、体温が混ざったような、やわらかくて甘い匂い。

(お肌も……すべすべしてるし、この意外とボリュームある胸板もまた……!)

そのまま胸元に顔を押し付けると、静かに響く心音が聞こえてくる。
目を閉じて、その鼓動のリズムに耳を澄ませる。

(このぬくもりも、匂いも、全部……全部、私だけのもの……)


それだけで、胸がぎゅっとなるくらい幸せだった。

(ただ、こうして抱きしめ合ってるだけなのに……どうして、こんなに満たされるんだろう)

好きな人が傍にいてくれる。
私のことだけを見てくれて、触れてくれて、優しく笑ってくれる。

(……本当に、幸せすぎる……ティオ様、いつもすっごく優しいし)

いつも”ルシが居てくれるだけで幸せ”とか、”ただ傍にいて”とか存在そのものを肯定してくれて。
その言葉に甘えて、特に何をするでもなく日常を過ごしてた。


(でもそればっかりじゃ、だめだよね)


ティオ様はいつも遅くまで研究してて、疲れてるはずなのに、私のことばっかり気遣ってくれる。

(私も……ティオ様の支えになりたい)



その想いが胸の奥に残ったまま、まぶたを閉じる。
温もりのなかで、少しだけ真面目なことを考えた。

(いつまでもティオ様が穏やかな顔で過ごせるように……私に出来ること……)

後回しにしていた“後継者教育”のことが、ふと頭をよぎる。

(……ちょっとだけ、やってみようかな)

まだ「継ぐ」って覚悟まではできてないけど、“ティオ様の隣に立つために”って思えば頑張れそうな気がする。

(ティオ様を攻める作戦の合間にでも……少しずつ、やってみよう)

そう思った瞬間――
自分でも気づかないうちに、ちょっぴりだけ背中が伸びた気がした。

(大丈夫。だって、私には――)

隣で眠る、最愛のひとの存在があるから。


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