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32話 甘い朝の時間とふたりのこれから

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!ティオ ルシフェリア 甘い朝の時間とふたりのこれから TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。

朝の光が、レースのカーテン越しに差し込む。
まぶたの裏にじんわりと明るさが届いて、ルシフェリアはゆっくりと目を覚ました。

(……ん……)

体を動かそうとして――

(……い、痛っ……)

お腹の奥が、ずん、と重く響いた。
腰のあたりも鈍くて、寝返りを打つだけでもつらい。

(……あれから、ずっとティオ様が側にいてくれて……)


また大泣きしたのに、私の話を聞いて全部受け入れてくれて。


(わかったよって優しく笑ってくれたし……言いたいことぐちゃぐちゃだったのに)

移動するたびに付き添ってくれて、身の回りのことはすべてやってくれた。
不思議と、恥ずかしさよりも安心感のほうが勝っていた。


(……好きすぎる、どうしよう)


私が寝るまでずっと、頭を撫でて、『ありがとう』『可愛い』『大好きだよ』と何度も囁いてくれて……

そんなことを思い出していると、ふわりと額に温かい手が乗せられる。

「……起きた?おはよう」

穏やかな声。
ベッドの脇にしゃがんだティオが、心配そうにこちらを見つめていた。

「体調どう?……お腹、まだ痛い?」

「……うん。ちょっとだけ……ずんってしてて」

「無理しないで。……何でも言ってね、今日はずっとそばにいるから」

その言葉だけで、また涙が出そうになる。
けれど今は泣かずに、ただ――
ゆっくりと手を伸ばして、彼の指をぎゅっと握りしめた。






身支度までも手伝ってもらって、促されるままにもう一度ベッドに横になった。

優しく手を撫でてくれて、そのぬくもりに、少しずつ心もほぐれていく。

「大人しく休んでね。……今日も一緒にゆっくりしよう」


そう言って、ティオもベッドに横になって身を寄せた。
ルシフェリアの唇にやさしくキスを落とした。
吐息と共に、ふわりと香る朝の光と甘さに包まれながら、ふたりの静かな時間が、そっと重なっていく――。


(あったかいな……ティオ様……)

ティオの唇が名残惜しそうに離れたあと、ルシフェリアはそっとまぶたを伏せた。

「……あの、ティオ様」

「うん?」

腕の中でルシが小さく体を動かしながら、少し照れくさそうに言った。

「お父様とお母様から、“好きに行き来していい”って許可をもらってて……」

「うん?」

「だから……また、泊まりに来てもいいですか?」

ティオは一瞬だけ驚いた顔をして――すぐに、ふっと笑う。

「もちろん……いつでもおいで」

優しく撫でる手が、ルシフェリアの髪をすくい上げる。

「むしろ、来てくれないなら僕が泊りに行くから」

「っ……もう……ティオ様」

ぽそりと呟いて、私は胸元に顔を埋めた。
しばらくそのまま甘えたあと、ふと思い出したように顔を上げた。

「そういえば……私、ティオ様のご家族にまだちゃんとご挨拶できてないんですよね」

「ああ、そうかも。……婚約式で少し顔合わせただけだね」

「だから、ちゃんと改めてご挨拶に行きたいです。お世話になるでしょうし……何より、ティオ様の大事なご家族ですから。」


その言葉に、ティオの瞳がふわりと和らいだ。


「お兄様が二人いて、伯爵邸には今そのお兄様達がお住まいなんですよね?それは”原作”にも書いてあったので知ってます!」

「そうそう。両親は長兄に爵位を譲ってから、南部の別荘でゆっくり過ごしてるから婚約式終わってもう帰ってる所だと思うけど……ありがとう、ルシ。兄さんたち、きっと喜ぶよ」

「どんな方々なんですか?次男のリュシアン様は原作で見てたから、少し雰囲気はわかりますけど……」

「……一言で言うと、“クセが強い”かな……あと、兄さん二人とも僕の事めちゃくちゃ好きだからびっくりするかも」

「え!じゃあすごく気が合うかもしれませんね」

思わず顔を見合わせて笑い合う、やさしい朝。
新たな関係を築き始めたふたりの、穏やかな時間が静かに流れていく――。


「……ティオ様って、本当に色っぽいんですよ。昨日からずっと、ドキドキが止まりません」

ルシのふいの言葉に、ティオは目を瞬かせる。

「そうなの……?どこが?」

「表情とか全部……すごく色気があって……私、忘れられないんですけど」

くすっと微笑むルシフェリアに、ティオは徐々に顔を赤くしていき、照れたように髪をかき上げた。

「……もう、恥ずかしいからそんなこというのやめて……」

「ふふ。でも、原作で見てたティオ様は――明るくて、誰にでも人懐っこくて、ちょっと変わってて……。そんなふうに読みながら思ってたんです」

私は、そっとティオの手に自分の手を重ねた。

「でも、今のティオ様は……私だけを真っ直ぐに見てくれて、私だけにそんな熱い目を向けてくれて。優しくて、甘くて、ちょっと強引で……でも可愛くて」

「……」

「私、ティオ様のことを“知ってるつもり”になってたんだなって。実際はほんの一部しか知らなかったんだって、気づいたんです」

まっすぐに向けられたルシの瞳に、ティオは少しだけ目を細めて――優しく笑う。

「だから目の前にいるティオ様をもっと知りたい。もっと……色んな姿、見せてくださいね」

「……うん。全部、見せるよ。君にだけ」

――私は、改めて思った。

この世界で、ティオ様と生きていきたい。
彼となら、どんな未来でも歩いていける。
それが、私の“本当の物語”の始まりなんだと。


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