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28話 本当に我慢してるのか気になって

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい! ティオ ルシフェリア 本当に我慢してるのか気になって TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。

ふわりと優しく仮眠室のベッドに下ろさた。

「……ちょっとだけ、一緒に横になろ」

そう言ってくれたティオ様の胸に、私は自然とすり寄った。
さっきまでの涙が嘘みたいに、心の奥があたたかく、柔らかく満たされていく。

「子供みたいなこと言って……ごめんなさい」

ぽつりとそう謝ると、ティオ様は穏やかに微笑んで、私の頬をそっと撫でた。

「ルシは……他の世界から、たったひとりで来たんだもん。不安な気持ちになるのは当然だよ。……いつも明るいけどさ。ちょっとでも不安なことがあったら、僕に教えて?」

優しい声で、まるで包み込むように言ってくれるその言葉に、また胸がきゅっとなる。

「……ティオ様もしかして“沼”ですか? こんな完璧な恋人、いますか? 私がティオ様なしじゃ生きられなくなったら、どうするんですか……」

「沼……?……それって、どういう意味?」

真面目に聞き返されて思わず笑ってしまう。
そんな私の額に、ティオ様はふっと笑うとキスを落とした。

「大丈夫。ずっと僕といたらいいよ。……いてくれるんでしょ?」

その言葉に、胸の奥がじんわりとあたたかく満たされていく。

狭いベッドの中で、自然と身体を寄せ合う。
彼の胸にそっと額を押し当てながら、手を重ねると、優しく握り返してくれた。

ティオ様が優しく話を聞いてくれて、胸に渦巻いていた不安は、すっかり溶けていった。

そしてぽつりと呟くように言う。

「……やっぱり、落ち込むのは私らしくないですね」

そう言って笑いかけると、ティオ様も微笑んだ。

「うん、ルシは笑ってる方がずっと似合うよ。……もちろん、今の真っ赤になった目も可愛いけどね」

そう言って、ティオはそっと私の瞼にキスを落とした。

優しくて、柔らかくて、あたたかくて――
触れられたところから心までじんわりと染まっていくような、そんなキスだった。

(……なんだか、触れたくてたまらない)

思わず、私は囁くように言っていた。

「……ティオ様。イチャイチャしたいです」

その言葉にティオ様は少し目を細めて笑い、私の顎を優しく持ち上げると、迷うことなく唇を重ねてくれた。

それは、宥めるような、優しいキス。
けれど、あまりにも愛しくて、足りなくて。

私の方から、もう一度。
今度は、そっと――けれど、さっきよりも熱を込めて、唇を重ねた。

ティオ様の目が、ほんのり驚いたように見開かれ、すぐにふわりと柔らかな笑みに変わる。

「……ルシ、大好きだよ」

愛おしげに囁かれ、また一つ、心がとろけていくのを感じた。
何度か唇を重ねた後、ルシフェリアはそっと名残惜しそうに顔を離した。
息が混ざり合うほどの距離で見上げると、ティオの瞳にわずかな熱が宿っているのが見えた。

「……ティオ様って、キス……すごく上手……」


余韻に身を預けながら、ふと気になったことを口にする。


「……慣れてるんですか?」

思わずぽつりと漏れた言葉に、ティオの手がぴたりと止まる。
彼は少しだけ目を見開いたあと、ふっと柔らかく微笑んだ。

「……全部、ルシが初めてだよ。キスも……」

あまりにも真っ直ぐに告げられ、ルシの頬が一気に赤く染まる。
胸の奥がじんわりと熱くなって、息をするのも忘れそうになる。


「え……? でも、あんなキス……。いつもとろけそうになるくらい気持ち良いのに?」

そう言った瞬間、ティオの目が見開かれて、さらに顔が真っ赤になる。

「ちょっ……そ、そういうこと言うのやめてくれる……っ!」

しどろもどろに目を逸らすティオの胸に、そっと手を置いた。
鼓動が、どくん、と手のひらに伝わる。

(……やっぱり、確かめたい。さっきクラウスに会った時、こっそり『触ったら我慢してるかわかる』って教えてくれたのよね)


今までに見て来た創作物を一気に思い返す。


(……どれくらい我慢してるのか、確認のために……)

恐る恐る、手の位置をほんの少しだけ下に動かそうとした――その瞬間。

「……だめだよ、ルシ」

低く、けれど優しい声が降ってきた。
次の瞬間には、その手首をそっと掴まれていて、動きが止められる。

「……ほんとに我慢できなくなるから」

真剣な目で見下ろされ、ルシの頬が一気に熱を帯びた。


「……触らなくても、わかるでしょ?」

その声音はいつもより低くて、妙に熱を帯びていて――耳に届いた瞬間、ルシの心臓がどきんと跳ねた。

「いつも必死で我慢してるんだから」

真剣な眼差しと、少し乱れた呼吸。
それだけで、何も言わなくても十分に伝わってきてしまう。

私は胸がいっぱいになって、コクコクと何度も頷いた。


***


大人しく諦めて胸に頬を寄せて、『全部ルシが初めて』――その言葉をぽやぽやと頭の中で反芻していると、ふと、ある記憶がよぎった。

「…………よくよく考えたら、原作の52話でヒロインのセレナ様に『経験ある』って言ってたけど……あれ、嘘っぽかったし。……ほんとに初めてだったんですね?」


私が原作の事をぽつりと漏らすと、急に顔を真っ赤にするティオ様。

「ルシ……っ! やめて、恥ずかしいってば!ていうか、そんなことまで書いてあったの!? ……ちょっと見栄張ったのバレてるの!?」

「ふふ、ティオ様、可愛すぎます……っ!」

顔を真っ赤にして焦るティオ。
その姿が可愛くて、たまらなくて。


「ーーそういえば、その時にティオ様『変な女の子がうろついてた』って言ってましたよね。あれってもしかして……」

「……あぁ。……それはルシのことだね」


バツが悪そうな顔でそう告げられて、思わず私は絶叫した。


「えええええええ!私原作に登場しないモブだと思ってたのに実は見切れてたんですか!?……ってことは65話と73話も!?」

「……詳しいことはわからないけど、僕がしゃべってるならルシのことじゃないかな」


思わぬ形で原作に登場してたことを知って、驚きつつも、恥ずかしそうに話す彼を愛しく思った。


(いつもは余裕そうに見えるけど、ティオ様もこんなふうに焦るんだな……)


たくさん泣いて、甘えて、やっとわかった。
ティオ様も、ずっと我慢してくれてた。


(……そうだよね。ティオ様も、色々我慢してるみたいだし、私もあと少し我慢しよう。)

あと少しだけ、焦らずに――愛を育てよう。


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