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2話 転生腐女子、推し活ライフ開始!原作改変せずに聖地で妄想

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい! ティオ ルシフェリア 転生腐女子、推し活ライフ開始!原作改変せずに聖地で妄想 TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。


ーーどうやら私、“推し様が存在する世界”の名もなきモブに転生してしまったらしい。


侍女・セシルの話から推測するに、現時点ではレオン様の呪いはまだ解けていない。
つまり今は、“原作がまだ終わっていない”ということ。


(これから、あの名シーンも……あの展開も、待っているはず!)


だからこそ、原作を変えてしまうような目立つ真似は絶対にしてはいけない。
もしティオ様とレオン様のシーンが私のせいでなくなってしまったら……生きていけない。


(TL小説の世界だし、殺されることはない。……過酷な運命もない、いわば“当たり”の転生……)


ひとり心の中でしみじみと呟く。


(こうなれば、転生ライフを満喫するしかない!)


セシルが部屋を出たのを確認すると、机に向かってメモ帳を広げた。


「よし!転生者らしく、まずは情報整理と作戦会議から始めよう!」



ーーー

【転生者メモ】※本人によるまとめ

家族:父と母。とても仲が良く、娘には甘い。
身分:ミルフォード侯爵家の一人娘で長女。
性格:物静かで人見知り。基本は屋敷暮らし。
恋愛事情:政略結婚させたくない両親の意向。恋人なし(経験もゼロ?)


――ここからが本題――

※原作は絶対壊さない!
※ティオ様の恋を遠巻きに応援!
※静かに推し活する!
※妄想で推しの幸せ補完は自由!


ーーー


「完璧……!私の転生者マニュアル、これで完成。鍵付き箱にしまっておこう」


吸い寄せられるように箱を開けようとした時、引き出しの奥に一枚の紙を見つけた。


「……ん?これ、何?」


取り出して目を通すと――


『私は侯爵家を継ぎたくありません。あなたの人生と取り替えて欲しいのです。勝手をお許しください。 ルシフェリア』


整った筆跡で綴られた丁寧な文章。
初めて見るはずなのに、不思議と意味はすらすら理解できる。


「……文字まで読めるなんてチート……いや、待って。“取り替える”?私の人生と……?」


『私の人生』という言葉が重く響き、思わず手が止まる。


(……あれ。私って、何をしてたんだっけ)


日本にいた記憶。
アニメも漫画もラノベも知識はある。

でも、肝心の“自分自身”の部分だけが霞んで思い出せない。
確かに“いた”はずなのに、その輪郭だけが抜け落ちている。
思い出そうとすればするほど靄がかかって思い出せず、再び紙に視線を落とす。


『侯爵家を継ぎたくありません』

――その一文が頭の中で何度も響いた。


「つまり、私はこの人の代わりに侯爵家を継ぐってこと?……無理では? さっき言ってた“後継者教育を嫌がってた”って、まさかこれ?」


現実味がじわじわ増していく。
ほんの少し、不安が胸に広がった。

……でも――


(推しのいる世界に来られた……!)


その事実が圧倒的な高揚感で、全てを上書きしてしまう。
帰りたい気持ちなんて微塵もない。

悩むよりもまず――推しのいる世界、つまり聖地で、推しの幸せを綴りたい。


(それがどれほど最高なことか!)


こうして私は、推し活の第一弾として“レオン×ティオ聖典”を作ることにした。
両親から「好きなことをしていい」と言われているのだから、堂々と推し活をしよう。


紙とペンを広げ、数日引きこもって書き続ける。

カリ……カリ……カリカリ……


ひたすらペンを走らせ、悩み、書き直す。
推し様の恋が報われる瞬間を、ただそれだけを追い求めて。



完成したのは――『レオン×ティオ聖典・第一稿(R18・BL小説)』。

ページを開けば、個人的ベスト・オブ・蕩け顔な名シーンがそこに。


ーーー

レオンの手が白衣にかかり、ティオの首筋へ口づけを落とす。 

『……ティオ、顔真っ赤』

『な、何言って……僕は……』  


レオンはさらに距離を詰め、耳元に囁く。  

『可愛い。……ずっと見ていたい』


ーーー

(……うん、完璧。ティオ様幸せそう。……でもこれ誰かに見られたら即死確定。気を付けよう)

同じ世界で推しを幸せにできる――その高鳴りに胸が止まらない。
原作で結ばれないなら、この“聖典”で救うしかない。

きっとそれが私の使命だ。

深く息を吐き、ページを閉じる。


(よし、数日こもったし、次は観光がてら外へ出てみよう)


セシルに協力してもらい、支度を整える。
慣れた手つきで髪を梳かれる。


(せっかくだし聖地巡礼だよね……ティオ様の職場“癒術理院”とか行ける距離かな?)


国の中といえど近いとは限らない。
けれど“癒術理院”は原作でも度々登場するし、皇都にある主要な場所。
セシルなら必ず知っているはずだ。


「セシル、癒術理院ってどこ?」


手を止めず、彼女はさらりと答えた。


「こちらから徒歩五分ほどの場所にございます」

「……え?」

「ではコルセットを締めますね。失礼いたします――」


戸惑う間もなく、愛らしい顔に似合わぬ力でぎゅううっと締め上げてくる。


「……んぐっ!? ちょっ……待って!? 苦しい!拷問!?」

「あっ……申し訳ありません、苦しくないようにしたつもりが……」


セシルは慌てて外してくれた。


(こんなの付けて生活なんて無理……でも付けなければノーブラ状態? ……透けるし揺れるし……)


「あのさ……布ない?胸に巻けるやつ。さすがにこれじゃ出られない」

「さらしのような物でしょうか?すぐにご用意いたします」


そう言って、セシルは布を持ってくると丁寧にさらしを巻いてくれた。

(恥ずかしいけど、丸出しよりマシ……ドレスも重いし、この世界大変すぎる)


「ありがとうセシル。じゃあ行ってきます!」






『護衛は必ずつけてください』と言われるがまま、護衛とともに癒術理院へ。
広大な敷地と荘厳な建物に思わず感嘆する。


「ここが癒術理院……想像以上……!」


メモを取りながら、壁や門の細工まで観察する。


(よし、記録した。ついでに癒術理院と公爵邸の距離も調べよう)


自作聖典p38、“雨に打たれるティオ様にレオン様が駆けつけるシーン”が活きてくる。


「測定器はないし……歩数で計るしかない」



一歩、二歩、三歩……歩数を忘れないように神妙な面持ちで歩いていると――

その時、背後から静かな声。

「……ねぇ君。さっきから何をしてるの?癒術理院の研究者には見えないけど?」

「ひっ……!」


振り返った先――

胸下までの茶髪をハーフアップにまとめ、緑の瞳を持つ青年。
細身の体に白衣、中性的で繊細な雰囲気と知的な空気感をまとっていた。


「……いる。」

紛れもなく、推し――ティオ様。

(やばいやばい……顔が良すぎる。想像以上に……しかも、この時はまだ髪長い……可愛い……)

本当に存在している。


「……無理。」


破壊力が規格外すぎて、言葉を失う。


「?……君、大丈夫?」


身をかがめ、覗き込んでくる。


「……っ、近っ……す、すいません!なんでもないですっ!!」


本能で危険信号が鳴り響き、私は護衛を引き連れ全力で逃げ帰った。

ーー原作を壊さないと誓った直後に、推し様と出会ってしまったのだった。


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