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19話 婚約は2週間後!?誠実すぎる彼に戸惑う

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!ティオ ルシフェリア 婚約は2週間後!?誠実すぎる彼に戸惑う TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。


二人で研究室に入り、鍵を閉めた瞬間――。
小さな音が部屋に響いたのと同時に、胸の奥で抑えきれない気持ちが弾けた。
私は気がついたときには彼の胸にぎゅっと抱きついていた。

「……! ルシ?」

驚いたようにティオ様が目を瞬かせる。
けれど私は何も答えられず、そのまま彼の胸にしがみついていた。
鼓動が耳に触れて、彼の体温が伝わってくる。


「……ティオ様、抱っこ」

やっと絞り出した声は、自分でもわかるくらい弱々しくて。

彼は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐにふっと微笑み、無言のまま私をひょいと抱き上げた。
体が宙に浮いて、胸の奥がきゅっと縮まる。

そのままソファまで運ばれ、彼の膝の上にちょこんと座らされると、身体の力が一気に抜けていくのがわかった。

「やきもち妬いたの?……可愛い甘えん坊さん」

柔らかく囁かれ、すぐにおでこに軽いキスが落とされた。
ちゅ、と小さな音が耳の奥まで響いて、胸の鼓動が跳ね上がる。

(……こんな私にも、呆れず優しくして……やっぱり……ティオ様のこと、好きだ)

「……すき」

気づけばぽつりと呟いていた。

「……え?」

驚いた彼の瞳が揺れる。

「好き……ティオ様。大好き」

正面から見上げて伝えると、彼は顔を赤くしながら小さな声で抗議した。

「……ルシ、ちょっと、可愛すぎるから……やめて……」

言葉とは裏腹に、腰に回された腕がきゅっと強くなる。

「ルシ……キス、したい」

静かに頷いた瞬間、彼の顔が近づいてきて、唇に優しい熱が触れた。

「きょ、今日は……少しだけ、さらし緩めに巻いてきたんです。……この間みたいに苦しくならないから、キスいっぱいしたいです」

頬を赤くしてもじもじと言うと、ティオ様の目が驚いたように見開かれ、耳まで赤くなっていくのが見えた。

「……ティオ様、可愛すぎます」

思わず口にした言葉に、彼はわずかに目を伏せ――

「……もう、知らない」

呟きと同時に、今度は熱を帯びた深いキスが落ちてきた。
呼吸が溶けて、頭の中がふわりと霞んでいく。

(……ティオ様……だいすき)

重なる唇。熱が、優しさが、胸いっぱいに広がっていく。
もっと触れて、もっと感じたくて。
けれど彼がそっと身体を押し留める。

「……ルシ……ごめん、ストップ……」

息を整えながら、それでも私を見つめ続ける彼の瞳が、優しさと苦しさで揺れていた。

「……こんな状況でも……婚約しないとダメなんですかっ!?」

今、興奮と羞恥で頬が熱くて仕方ない。
自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。
それでも――ティオのシャツをぎゅっと握りしめ、真剣なまなざしで彼を見上げた。


「じゃあ……婚約します。私と、婚約してください」

一瞬の沈黙。
ティオは驚いたように固まっていたが、やがてふっと肩を揺らして小さく笑った。
その頬も赤く染まっていて、彼の緑の瞳が優しく揺れている。

「……うん。ありがとう。……すごく嬉しい」

静かに、けれど確かな声でそう告げると、彼はそっと身をかがめ、私の唇にもう一度だけ軽くキスを落とした。

「……じゃあ、婚約したから……つ、続き、しませんか……?」

勢いのまま、顔を真っ赤にしながらも懇願するように見つめる。
自分でもどうしてこんなことを言えるのかわからない。
ただ、胸の奥に溢れる気持ちが止められなかった。

ティオが一瞬だけ言葉を詰まらせ――そして、小さく息を吐いて笑った。

「……婚約って、“婚約式”が終わってからってことだよ?」

「――――え?」

まるで雷に打たれたみたいに、思考が止まる。

「……僕だって……本当はしたいけど、ルシの外聞を守るためにも婚約式までは……我慢しよう」

その言葉に、胸の奥で何かが真っ白に燃え尽きていった。
灰になる勢いで、私はただ口を開けてティオを見上げる。

「……えっ、あの……ちょっと待って……。私が婚約しますって言ったら婚約じゃないんですか?今のは口約束的なこと……?」

「うん。……帝国ではちゃんと式をして、正式に婚約成立だからね」

当たり前のように言われ、さらに目の前が真っ白になる。

「それで、婚約式って……い、いつ頃出来るんですか?」

期待と不安がごちゃまぜになった声が、わずかに震えていた。
彼は少しも迷わず、あっさりと答えた。

「ルシのご両親には、もう許可もらってあるから……準備が整えば、早くて二週間後くらいかな?」

「…………は?」

頭の中に、一度に流れ込んでくる情報が多すぎて、理解が追いつかない。

(……なにから突っ込めばいいの!? 婚約式!?二週間!? 両親の許可!? えっ、もう……情報が渋滞してる……!)

「……?」

「えっと……まず両親の許可、もらってたんですか!?」

「うん。ルシが僕の事を好きになってくれたら、婚約を申し込みたいと思ってますって……まず僕の意思は伝えてる」

「…………」

彼の言葉に、頭の奥が過去の記憶を勝手に呼び起こす。

──ティオ様が、僕の事好きになるまで毎日会いに行くねと言って、毎日来てたあの時。

『いつ婿入りしてくれるんだ?』

そう言って笑っていたお父様の姿が、鮮明に蘇る。


「……あの時のお父様の“婿”って……そういう……って、え?婿?」


ぽつりと呟いた私に、ティオが首をかしげた。


「……うん、僕がルシのところに婿入りする予定だけど……?」

「ええええ!?」


想定外すぎる情報が一気に押し寄せてきて、思考が完全にフリーズする。


「ちょ、ちょっと待ってください! 私がお嫁に行くんじゃなくて、ティオ様が……うちに!? 婿に!?」

「そうだけど……いや、ルシ……もしかして、知らなかった?」

「知らないですよ!!」

私の叫びに、ティオがくすっと笑い、肩をすくめる。

「ルシのお父様もお母様も、ルシを幸せにしてくれるならって、すごく応援してくれてるよ」

「……い、いえ、そ、それはうれしいですけど……」

混乱で真っ赤になった私を、ティオがまっすぐに見つめ、静かに囁いた。

「……ルシの隣にいるためなら、僕はどんな形でもいい。」

「あぁ、ティオ様好きすぎる……」

言葉にならない声を漏らし、私は彼の膝の上で顔を手で覆った。

「……それにしても、二週間とか……待てません……」

しょんぼりと肩を落としながら、私は小さな声で抗議した。
けれどティオは、そんな私を見て困ったように微笑む。

「……まぁ小さな貴族の家なら、数日で簡単な式を挙げることもできるけど……ルシのところは侯爵家だしね。招待状や式の段取りも、礼儀として整えないといけないんだよ」

わかってはいる。わかってはいるけれど――。

胸の中でむくむくと膨らむこの欲望は、どうしたらいいの。
宥めるようなティオの笑顔に、私の口からとうとう本音がこぼれた。

「……やだ、そんなの……今日先に進む気満々できたのに……!」

「……っ!?!?」

一瞬でティオの顔が真っ赤に染まった。

「ル、ルシ!?ちょ、ちょっと待って……」

「……両親公認なのになんで、だめなんですか?」

思い切って食い下がる私に、ティオは困ったように笑みを浮かべる。

「本来だったら帝国では結婚後までそういうことはしないものなんだけど。……実はね。最初にルシのご両親にご挨拶したとき、”結婚まで大切にお守りします”って言ったんだけど」

「婚約式だけじゃなくて結婚後……!?それ一体いつ!?」


私の心がぐるぐると混乱する中、ティオは続けた。


「でもご両親の方から、『そんなに堅くなくていいのよ?』って、言われた」

「……えっ!?お父様とお母様の方が緩い!? え、……それならなんで我慢しないといけないんですか!?」


身を乗り出して抗議する私に、ティオはまっすぐな瞳で言葉を重ねる。


「……ご両親の意向だけじゃなくて、君自身の“外聞”にも関わるから。君を大事に想っているからこそ――せめて、婚約式まではお守りしたいって、そう伝えたんだ」


優しい声。でも、その奥に強い意志を感じる声だった。


「外聞?……他人になんて言われようと私は別に良いのに……っ!」


ぷりぷりと怒る私に、ティオは柔らかなまなざしを向けて、そっと髪を撫でる。


「……あともうちょっと、ね?」


その言葉はあたたかくて、優しくて。
なのに確かな距離を保つその手に、胸がぎゅっと痛む。


「……ぅ……」


私はしぶしぶ口を閉ざし、ティオの胸元にぎゅっと抱きついた。
彼は何も言わず、そっと腕を回して、優しく私を包み込んでくれる。


(なんで今日だめなの!って思ったけど……両親がそう言ってくれなかったら、結婚するまでずっと我慢しないとだったってことか……お父様、お母様……ありがとうございます……)


心の中で小さく拳を握った。


「……じゃあ、あと二週間、キスだけで我慢します。でも――誘惑するのは、自由ですよね?ティオ様がもしかしたら、”その気”になるかもしれないし……」


挑むような目でそう言うと、ティオは一瞬言葉を失い、そして苦笑した。


「……え?……もうルシ、理性もたないよ。でも我慢するけど……」

「……いっぱい誘惑して、ティオ様の、可愛い顔も――とろけそうな声も……たくさん引き出してみせますからね?」

「わかったよ……ルシがしたいなら、いくらでも」


彼は呆れたように笑いながらも、本気で怒ることはしない。
戸惑いながらも、全部を受け止めてくれる。


(……なんだかんだで、ティオ様に全部手のひらで転がされてる気がする)


その優しさに、また好きが増えてしまうのだった。


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