スポンサーリンク

16話 想いが重なる瞬間。優しさと熱が溶け合う夜

××すぎるんです、公爵様・・・っ!レオン セレナ想いが重なる瞬間。優しさと熱が溶け合う夜 ××すぎるんです、公爵様・・・っ!
※本作品は過去作をもとに、一部表現を調整した全年齢版です。物語の世界観はそのままに、より読みやすく再構成しています。



セレナの唇が、名残惜しそうに離れる。
そっと目を開くと、レオンの瞳が真っ直ぐに見つめていた。

そこに宿っていたのは、深くて熱い、想いの色。

ほんの一瞬、時間が止まったかのような沈黙がふたりの間に流れる。

「……もう、止まれない」

低く囁くような声とともに、レオンの手がセレナの頬に触れた。
吸い寄せられるように、ふたたび唇が重なる。

今度のキスは、さっきのような優しさだけではなかった。
けれど、荒々しさではなく――ただ、ひたむきな想いが込められていた。

思わずこぼれた声を、レオンが静かに受け止めるように、唇を深く重ねてくる。
柔らかな感触が、確かに想いを伝えてくる。

触れるだけから、少しずつ形を変えていく。
唇が唇を挟むように、やわらかく、熱を伝え合うように。

(……好き。どうしようもないくらい、好き)

セレナの胸の奥が、ふるふると甘く震えた。

鼓動も、息遣いも、すべてが彼と溶け合っていくような気がして――
世界には、もうふたりしか存在しないように思えた。

そして、ふと。
温かなものが、唇の間をそっとくすぐる。

「……っ……」

柔らかな熱に触れた瞬間、セレナの体が小さく震える。
胸の奥から、くすぐったい甘さがこみ上げてきた。

(……こんな気持ち、初めて……)

初めて知る感覚に、思わず目を閉じる。
彼と想いが交わるたび、身体の奥が優しく反応するのを感じた。

口付けは静かに、けれど情熱を秘めて重ねられていく。
熱と熱を伝え合うその感触が、胸の奥に深く染み込んでいくようだった。

「……セレナ」

レオンの声が、低く耳元に落ちる。
その響きだけで、また胸が高鳴る。

「……っ、公爵、さま……」

震える声に、レオンが眉をひそめた。

「……名前で、呼んで?」

セレナの瞳が、驚きに揺れる。
その一言で、胸がきゅうっと締めつけられるように熱を帯びた。

「レ……オン様……」

「様も、いらない」

思わず肩が跳ねるほど、優しく、それでいて確かな声音。
それに押されるように、セレナは静かに呟いた。

「……レオン……」

その瞬間、レオンの瞳がかすかに揺らいだ。

「……そんな風に名前を呼ばれたら……」

再び唇が重なる。
その優しさに、セレナの心はゆっくりと溶けていった。

どれくらいそうしていたのか。
唇が名残を残すように離れていき、額を寄せ合ったまま、ふたりは静かに息を整える。

セレナの頬は熱を帯び、唇は少し震えていた。

そして――レオンはふと我に返ったように、少しだけ身を引いた。

「……ごめん」

低く、けれど優しい声だった。

「体調が戻ってきて、少し冷静になったら……無理をさせてしまったかもしれないって」

セレナが首を振ろうとするのを、そっとレオンが制す。

「君のことを想う気持ちが、大きくなりすぎて……止められなかったんだ」

彼はそう言って、セレナの手をそっと握った。

「出会ってまだ日が浅いけど、どうしようもなく惹かれてる。 君の優しさも、かすかに揺れる笑顔も……全部、手放したくないと思ってしまう」

そう言って、レオンは一度だけ視線を伏せ、それからまっすぐ彼女を見つめた。

「……君のことが、好きだ、セレナ。順番を間違えてしまった。もっと、大切にするべきだったのに……本当に、ごめん」

静かな寝室に、ふたりの鼓動が響いていた。

セレナはしばらくの間、彼を見つめたまま黙っていた。
そして――そっと、一粒の涙が頬を伝った。

「……私……」

声がかすかに震えていた。

「こんなに……幸せだって思ったの、初めてで……」

揺れる瞳のまま、セレナは微笑んだ。

「私も……レオンのことが……好き」

その小さな声は、けれど確かに届いた。

今まで誰にも言えなかった想い。
奥深くに閉じ込めていた「誰かに必要とされたい」「愛されたい」という願いが、いま、叶えられたのだと、セレナは初めて気付いた。

レオンはそっと、彼女の涙を指でぬぐった。

「ありがとう、セレナ……君と出会えて、本当によかった」

そう言って、彼はそっと唇に触れるだけのキスを落とし、やさしく抱きしめた。

――まるで夢のようだった。

レオンの言葉が、何度も胸のなかで繰り返される。
好きだと、手放したくないと。
今まで冷たかった心の奥が、やわらかく、温かく溶けていく。

(本当に……私を、こんなふうに……)

彼の体温も、指先のぬくもりも、
さっき交わした言葉のひとつひとつも、全部が――愛おしい。

彼に触れられた場所が、まだぽうっと温かさが残っている気がした。
でもそれは、どこまでもやさしくて、甘い余韻だった。

もっと彼のことを知りたい。
もっと一緒にいたい――

そんな気持ちが、胸の奥から静かに溢れていく。

セレナはそっとレオンの胸に額を寄せ、その鼓動に耳を澄ませた。
彼の心音が、少しだけ早くて――嬉しくなって、また胸が熱くなる。

この鼓動も、このぬくもりも。
ふたりの間に生まれた、大切なものが育てていると――そう信じたくなった。

☜前の話へ         次の話へ☞

タイトルとURLをコピーしました